オルガニスト楽屋話

第5話 サンサーンス交響曲第3番<オルガン付き>---1997.3.20.


<オルガンシンフォニー>とも呼ばれるこの曲は、オルガンが入ったオーケストラ作品の中でも取り上げられることが多く、私も、大好きなこの曲を演奏出来ます機会が多いことを喜んでいます。今年もこれから4回、演奏の予定がありますが、これまで正確に数えたことはありませんが、40回近く演奏したことと思います。オルガニストであったサンサーンスの作品らしく、効果的にオルガンが用いられています。2楽章ですが、4つの部分から成るこの曲の、第2部の静かな部分からオルガンが入りますが、祈るような気持ちにさせられる美しい旋律です。そして第4部は力強いオルガンのハ長調の和音から始まり、オルガンとオーケストラの素晴らしい音響効果で、コーダへと導かれます。


演奏の機会の多いこの曲ですが、いつも新鮮な気持ちで接することが出来、また新しい魅力を感じることが出来ますのは、いろいろな指揮者、オーケストラとの出会いがあるからだと思います。フランス国立リヨン管、プラハ放送響はじめ、日本の主要オーケストラと、各地で演奏してまいりました。J.フルネ、D.シャローン、その他、色々な指揮者との忘れられない出会い、演奏を通して、多くを学ばされました。


オルガンはとても不器用な楽器で、オーケストラの音量の変化(微妙なダイナミックの変化)、指揮者の細かな指示についていくのは、とても難しいのです。これまでの演奏経験を通して、オルガンのパート譜に書かれたこと以上に、私は鍵盤交替や、レギストレーション、スウェルの使い方に色々な工夫をして弾いています(秘密にしておきます)。 これは弾くオルガンによっても(例えば、サントリーホールと芸術劇場とか−)違います。


オーケストラとオルガンの音量のバランスも、難しいものです。リハーサルは練習場で、電子オルガンで。本番の会場では、ゲネプロのたった一回のリハーサルだけです。まさに<勘>に頼るしかありません。同じオルガンでも、指揮者、オーケストラによって違います。オルガニスト、そして指揮者も、客席とは違う 音響条件のところに居る訳ですから、中には、客席中央まで走って行って、バランスを聴かれる指揮者もいます。 その上、もっと難しいのは、本番とゲネプロでは、オーケストラの鳴りかたが違うということです。特にTuttiのところは、管楽器の鳴りかたが違う−−こんなことも 予測しなくてはなりません。


オルガンの可能な限りの最弱音でも<強い>と言われた時、反対に最強音を出しても<オルガンが聞こえません>−−この言葉には、どうしようもならないのです。


オルガンは<一台でオーケストラ>などとも言われますが、オルガニストは、さまざまな音楽表現を可能にするテクニックと、楽器の使い方、そして音楽性を持っていなければならないと考える私にとって、オーケストラとの共演、素晴らしい指揮者との出会いは、とてもありがたく、大切な経験となっています。

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