オルガニスト楽屋話

第101話  突然の代役 ---2009.1.28.

先週土曜日の朝早く、携帯電話が鳴りました。何だろうと電話に出ると、川口リリアホールの事業課の方からで 「来日予定のオルガニストが骨折された」と。私のプロデュースするプロムナード・コンサートの 出演者で、連絡はいつもメールでやりとりし、翌日の日曜日には羽田空港に迎えに出る約束もしていました。 信じられないような出来事、そして連絡がないのもおかしいと思い、その真偽を確認しなくてはと本人にメールをすると、階段から落ち腕を 骨折、楽しみにしていた来日演奏だけどキャンセルせざるをえないと。そして2通のメールを出したのだけど、、とも。 あわてて調べてみると、なんと削除メールのフォルダの中に!こんな大切なメールを捨てていたとは、、。 毎日200通以上の迷惑メール、その大半が英文なので誤って削除してしまったのでした。 企画をさせていただいている責任もあり、急遽代わりに私が演奏することに。 怪我&キャンセルは人事ではないし、穴をあけるわけにはいかない、演奏者が変わり楽しみにしていらした方には申し訳ないけれど、いらしてくださった方のために 何か弾かないと。 メッセージ第100話で「いつも何が起こるかわからない・・」と書いた矢先、思いがけないような ことが飛び込んで来ました。

さて、何を弾こう。本番まで2日しかない〜!楽譜棚の隅から隅へ目を通し、弾きたい曲、すぐに 弾けそうな曲の楽譜を選び出す。部屋、そしてオルガンのまわりはたくさんの楽譜が散乱。その中から選曲し、 数時間かけプログラムが決定、そしてホールへ連絡。ホールもキャンセルの 対応に迅速に動いてくださいました。

前日はホールでのリハーサル、演奏予定のオルガニストのリハーサル時間を私が使うことに。 バタバタの中、とりあえず楽譜を持ち急いでホールへ。着いてみたら持ってきたはずの お財布がバッグの中にない〜。免許書も不携帯、カードもお金もなし、 所持金はなんと車の中にあった50円玉2枚だけ。100円で何か食べられるかな、、などと思いつつリハーサルする私。 お昼を過ぎた頃、お休みの日にもかかわらず心配され出勤された担当の事業課の方がオルガンのところへ来てくださいました。お昼は 上階のレストランでどうぞ!と。お財布を忘れてしまったことを話すと、不安でしょうからとご親切にも お金を貸してくださいました、感謝でした。リハーサルは順調に終わり、オルガンも好調、 あとは翌日良いコンディションで臨めるようにとホールを後に。免許不携帯ですから慎重に走りながら我が家へ戻りました。

さてお財布は?あるはずの家にない!!困った〜。しばらくパニック状態。落ちつきを取り戻しつつ、もしかして!と、 車の中を念入りに探してみると、助手席の下に〜〜あった!!ホールへ向かう行きに急ブレーキを踏んだ際、バックが後ろの座席から下に落ち、その時に 飛び出し、隣の座席下まで飛び出していたのです。 ハプニングの上にさらにハプニング。突然のピンチヒッター劇、年始早々いろいろなことが起こりました。 代役ではありましたが、寒い中、ホールに集まってくださった方々と共にオルガンの音色を共有する時間、 幸せ感いっぱいでした。結局、私の大好きな曲ばかり、いつも心にある大好きな音楽を聴いていただくことに。 弾き慣れたリリアホールのオルガンでしたので、コンサートも何とか無事終わりました。 突然のキャンセルに様々な対応をしてくださったホールのスタッフには心より感謝、そして コルンドルファーさんの腕の全快をお祈りします。 水泳やトレーニング、スキー、楽しいことはいっぱいあるけれど、「演奏」することは私にとって最高に楽しいことであり、 またそれが私に与えられているのだなと痛感するのでした。


Index