オルガニスト楽屋話
第106話 裏話@愛知県芸術劇場 ---2009.9.16.
名古屋、愛知県芸術劇場でのソロ・リサイタル。前日の朝、7時に我が家を出て午前10時にホールに入り、
午後4時半までリハーサル。5段鍵盤、93ストップ、日本最大の楽器です。編曲ものやロマン派の大曲のプログラムを弾くには、
レジストレーションにも時間がかかります。今回は2つの演奏台で弾くので、両方の演奏台にも慣れなくてはいけない、
ほとんど休憩もとらずに念入りな音づくり、そして楽器に慣れ、
効果的な演奏を模索しながら没頭すること約6時間。リハーサルが終わると主催者の方がタクシーを呼んでくださり、
ホテルへ。ほっと部屋で一息つくと、履いていたズボンのお尻の下のあたりに、ぽっかりと大きくあいた穴を発見!!!
オルガン演奏では椅子にどっしり座るというよりは、止り木に止まるように浅く座り、右へ左へと
体の向きを変えたりしながら、手足を動かします。腰で支え、体は浮かせたような状態です。ペダル演奏のほか、
ここのオルガンには2つのスウェル・ペダル(シャッターを開閉し音量を変える装置です)、ステップ
(コンビネーションを先送りするボタン)操作、かなり激しく足を動かしていました。丁度、一番力がかかり、
擦れるところにぽっかり穴が、、、。普段は生地が擦れて傷んだり、白っぽく色あせたりはしますが、
まさか破れるとは、、、。ホール→楽屋→タクシー→ホテル→部屋、、この間、すれちがった人達はいました、
気づいた人は?!お気に入りのアルマーニの黒いパンツでしたが、捨てました。
演奏会当日の朝、コンタクトレンズを入れないと何も見えない私はまず目にコンタクトを。しかし、
どうも違和感があり、汚れたのかな、そろそろ2週間の使い捨ての使用期限と思い、新しいレンズにすることに。
まず右目からレンズをはずし新しいレンズを。そして左目にも新しいレンズを。すると左目はさらにひどい違和感が、
しかも視界がぼやける〜。これで本番、大丈夫かな、と思い、念のため目から一度出してみると、レンズが分厚い。
もしかして〜?!!古いレンズの上に新しいレンズを入れていました。つまり2枚重ね、、
このまま演奏会に臨んでいたら。。。まったく慌て者です。
久しぶりに弾く愛知県芸術劇場の大きなオルガンは、ダイナミックレンジが広く、スェウルがよく効き、
表現力豊かで、編曲ものには効果的。私の体に馴染むのです。そしてなんだか懐かしい。この懐かしさは何だろう、、、。
それは、ドイツ、フライブルクの音楽大学でした。留学時代に勉強したフライブルク音楽大学、在学中に新しい校舎と
ホールが完成し、そこにはドイツのオルガン製作家シュケのコンサート・オルガンがありました。愛知県芸術劇場の
オルガンと同じ製作家です。そして製作された年はほぼ同じ、つまり同じ頃につくられた、姉妹のような楽器なのです。
恩師サットマリー先生のレッスンを受け、試験前にはホールに一日こもって練習したこともありました。
緊張して迎えた2回の試験、公開試験で試験官のほかに友人、お世話になった方々に見守られての演奏会でした(右の写真)。
沢山の思い出のある楽器です。それで懐かしさを感じたのですね。私には慣れた、弾きやすい楽器というわけです。
将来のことなど何もわからず、何も考えず、ただただ演奏することが楽しくて没頭し、夢中になっていた私が思い出されました。
昨日のコンサートは、平日の午後のコンサートにもかかわらず1800名収容の会場はほぼ満席に。たくさんのお客様と暖かい時間を過ごすことが出来ました。
オルガンを弾き続け、そしてこんな幸せな日がやってくるとは。支えてくださった多くの方々に心より感謝、そして「夢を追って」・・・私の大好きな言葉です。
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