オルガニスト楽屋話

第113話  続・ポーランドへの一人旅 ---2010.8.14.

前記のメッセージをお読みくださった方々から「大変だったわね〜」と。 実はもっとスリリングだったことや思わぬハプニングがあったのです。

クラコフでは音楽アカデミーの建物の最上階の6階にあるゲスト・ルームに宿泊させていただきました。 下の階は、教授の研究室や事務所、あるいは練習室のようで、日中は教職員や学生が頻繁に出入りしていました。 また隣の部屋には、ピアニストという女性が宿泊し、何度か顔を合わせることに。しかし、最終日、アカデミーは夏季休暇に、 そして隣の女性もチェックアウトしたようで、1階の入口は閉まり、ブザーを鳴らすと管理人さんが出てきて鍵を開けてくれるように、 人気が急になくなり寂しくなったのです。廊下は真っ暗に。食事や買い物に出入りする度に、 エレベーターは私が乗った後、誰も使っていない気配が。私が降りた後は、ずっと6階に止まったまま、、 つまり私以外の出入りがない、この6階建ての大きな建物にいるのは私と管理人さんの二人だけ〜〜。こわい〜〜。 でもあと1泊だから、頑張って眠るしかない!と眠りについた私でした。

クラコフからノヴィ・ソンチへ、リハーサルと本番のため片道2時間、バスで2往復したのですが、 リハーサルが長引いてしまったのと、どしゃぶりの雨、さらにはバスが1時間近く遅延し、 夜の9時過ぎにクラコフ駅に到着。夏の9時ならば明るいだろうと思ったのが全くの予想違いですでに暗く、 大雨、歩く人もいない、靴も洋服も楽譜もびしょ濡れに、石畳の夜道は暗く、恐いし寒いし、お腹はすくし、 横殴りのそれは冷たい雨でした。

クラコフで、気管支炎のアレルギーによる咳こみが始まってしまい、 持って来た薬を見たら1回分、残響の長い教会に私の咳は響く〜、これではまずい、 薬を調達しないと。言葉も通じないというのに、薬局へ行き、咳きをして 「薬を欲しい」と。ジェスチャーと英語で薬を買った私。

ドイツの友人宅での別れの時、予期せぬハプニングが。スーツケースは満杯に膨れ上がり、 さらに増えたもうひとつのバッグとの2つの荷物をトランクに乗せ、いよいよお別れの時が来た。 そこへ友人がむき出しのワインのボトルを片手に「Keiko〜、ドイツワインをどうぞ!」と。 別れ際に贈り物をするのもお洒落な習慣のようで、留学から帰国時、帰る間際に大きなぬいぐるみをもらい、 抱いて飛行機に乗り、成田まで帰ったことを思い出しました。え〜、もうこれ以上、入らない〜、手荷物、、 とんでもない、持ち込める液体の制限もあるというのに、こんな大きな瓶など没収されてしまう。。。 でも折角の気持ちを断れないし、私も持ち帰りたい。何とかしなくてはと私は何か包むものはないかと頼み、 その隙にスーツケースを再度引っ張り出し開けて、衣類など壊れ物でないものを2つ目の預けるバックに詰め込み、 何とかスーツケースにワインのスペースをつくった私、ふ〜。「ありがとう!」。

極めつけは帰り、フランクフルト空港で。友人に空港まで送ってもらい、規定の2時間前にチェックインし、 重い荷物から開放された私はまだ時間があるわね〜と、友人とカフェに入り、 最後にドイツの味をとKaese Kuchenケーゼ・クーヘン(チーズケーキです)を食べ、 またそこで友人と話に花が咲きおしゃべり。それではそろそろと、ゲートの指示のある所でまで送ってくれた友人と 別れて一人になった私は公衆電話を見つけたのです。そうだ、アドレス帳もある、ドイツの友人、知人に電話をしよう! 売店で「5ユーロか10ユーロ」と聞かれ、10ユーロのテレフォンカードを買うことに。以前と変わらない分厚い紙の テレフォンカードは懐かしいし、友人、知人に電話を始めたらとまらなくなったのです。まだ残金があるからと、 またここでおしゃべりに花が咲くことに。そしてふと時計を見ると、すでに搭乗時間!ゲートの方向に向かうと、 大変な行列が!!フランクフルトは巨大な空港で、うっかりしていた、各ゲートの近くでセキュリティ・チェック だったのです。しまった〜、え、これからこの列を並んだら間に合わない〜。ドイツのセキュリティ・チェックは 入国時も下着の中にまで手を入れてくるくらい(女性の監視員です・・)厳しく、そして時間がかかる。 だからと言って、「急ぐので」と言うと不審者と怪しまれるだろうし。ルフトハンザだから、 容赦なく時間に遅れれば飛んでしまうだろう、、ドキドキ、ハラハラで列を待ち、抜け出すやいなや猛ダッシュ! もちろんラウンジや、免税店で買いたかった買い物も全てパス。巨大なエア・バスに走り込んで飛び乗った私は、 全員がすでに着席し、私は最後の一人、危うく乗り遅れるところに、、

メールで緊急のための連絡先を尋ねられ、私の携帯の電話番号と「現地でネットに接続できるかわからないので、 緊急時は携帯メールで・・」と書いたのですが、どうも反応がなかった、、それもそのはず、携帯でメールを読む (受ける)、携帯メールは普及していなかったのです。「あなたの電話は写真も撮れるの?私のは電話だけよ」と、、 あらあら、そういうことだったのですね。

全て何とかクリアしてきたものの、いろいろあった一人旅でした。


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