オルガニスト楽屋話

第117話  心に響きを求めて〜札幌での演奏会〜 ---2010.11.7.

1年ぶりに札幌にやって来ました。昨年、カトリックの北一条教会で演奏したところ、聴きにいらした プロテスタントの北一条教会の音楽委員でオルガニストの方から今回の演奏会のお話をいただいたのです。 同じ名前、そして同じ北一条通りにある教会ですが、札幌駅をはさみ東と西と全く違う場所にあります (ご葬儀や演奏会、間違われる方も多いそうです)。カトリックの北一条教会にはフランス、そして プロテスタントの北一条教会にはドイツのオルガンがあります。

東京から飛行機で僅か1時間半ですが、空気はきりりと冷たく引き締まり、爽やかで、まるでヨーロッパ。 車でお迎えに来てくださり千歳から札幌へ。紅葉で色づいた木々、広々とした景色、ドイツにも似ていて、まるでアウトバーンを 走っているかのような気分に。 今年は暑い夏が長く続き、紅葉が例年より遅いそう。教会は大通り公園も近く、 左の写真はリハーサルの合間に写した大通り公園の紅葉です。

この教会を訪れるのは3回目。1回目は大学2年生の時、師事していた廣野先生のアシスタントで。私にとって初めての北海道でした。 そして2回目は留学から帰国して間もなく、幸運にも演奏会のお話をいただいたのです。そして今回は 「伝道開始120年」という記念の年にお招きを受け、懐かしい教会で再び演奏させていただきました。

オルガンという楽器はポカポカで暖かい南国よりも、ドイツや札幌のような寒い地方の方が似合っていますね。 「リハーサルの日は休日なので暖房が入りません、暖かくしていらしてください。」と言われ、寒さの中の 練習になるかと思ったらとんでもない。鉄筋で2重窓の会堂は、暖房がなくても東京の教会よりずっと暖かく、さすが北国だなと思いました。 演奏するバッハ、モーツアルト、ブルックナー、、などの作品が生まれた地に思いを寄せながら、レジストレーションは続き、 本番を迎えました。 左の写真は本番前のリハーサルの時に、オルガン演奏台での私は少々緊張気味。

オルガンは南ドイツのケーベルレの楽器。私が留学したフライブルクからも近い地で製作された楽器は 暖かい音色でたっぷりと歌い、教会の会堂はよく響き、ドイツにいるような懐かしい気分に浸ることが出来ました。 またオルガンを愛し、心を籠めて大切にしていらっしゃる方々の思いが伝わってくる楽器でした。 これはオルガンという楽器の“特性”でもありますね。


「トークを挟みながら演奏を」とのご依頼、各場面ごと、演奏〜トーク〜演奏、と集中する頭に切り替えるのは 難しいのですが、(左の写真は)トークをする私。主催者の方が撮影したものです。


これはオルガンの 説明になりますが、私が立っている後ろに見えている木製の細長いよろい戸は 「スウェル・シャッター」と呼ばれるもので、パイプがぎっしり入った箱の戸を開閉することにより、 強弱をつけることができるのです。




会場で配られたプログラムの表紙に『オルガン演奏会・心に響きを求めて』と書かれていました。 「心に響きを求めて」・・これは教会の主催者の方が考えてくださったタイトルですが、 なんて素敵なメッセージでしょう。 暖かいケーベルレ・オルガンの響き、そこにはオルガンを愛している人々の暖かい息吹がありました。 そして私のオルガンに耳を傾けてくださった会場の皆様の暖かいお気持ち、 晩秋の札幌、これから寒い冬を迎えようとしている札幌の地で「暖かさ」をいっぱい感じました。

紅葉の木は、秋から冬へのグラデーション・カラーに。 演奏会の翌日、市内を数時間散策、美しい紅葉、そして美味しい北のお味も堪能し帰宅の途に。また今年も札幌に素敵な思い出をつくることができました。

札幌で暖かさをいただいた私はこれからクリスマスへの様々な準備に入ります♪お寒い季節を迎えますが、皆様方もどうぞお元気で!


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