オルガニスト楽屋話

第127話  高原での演奏会 ---2011.7.5.

東京から約2時間半、久しぶりの快適ドライブで車も私もご機嫌。中央高速に乗ると、まもなく相模湖付近、緑が見えてくる。 都会の喧騒、そしてここ数日の暑さから逃れほっとする。甲府盆地に入ると、また車の温度計は上昇するが、 高速を降り、八ヶ岳の山を登っていくと、空気はクール〜〜&フレッシュ、 緑の木々に囲まれた清里に到着。清泉寮は子供の頃から時々訪れ、アイスクリームの 美味しいことは知っていたが、オルガンがあるとは知らなかった。

清里聖アンデレ教会。1948年に建てられ、この教会を拠点に、清里清泉寮地域の開拓が行なわれ たそうだ。今は八ヶ岳を訪ねる観光客が必ず訪れる清泉寮だが、こうした伝道と開発の歴史が あったことを知る。聖公会の教会で、会堂は石造りの平屋の建築。 趣のある木の横開きの扉をガラガラと開けると、そこから靴を脱ぐことに。 中に入ると木の温もりを感じる何とも素敵な礼拝堂。窓ガラスの内側には障子、 モダンな和風建築という感じ。 床は木で、畳が敷かれてる、そして両側と後方には椅子が 並べられていた。コンサートの時は、椅子を回りに置き、その椅子に座る方と畳の上に座る方と。 ヨーロッパのカテドラルで、石の上に座ってオルガンを聴く若者の姿がふと思い出された。 オルガンと畳・・想像できなかったけれど、意外にマッチした。そして歴史を感じさせる建物を、この地の 開拓のシンボルとしてそのまま保存しているということがよく理解出来た。

こうしたこの地を開拓した人々のことや歴史を感じる会堂の正面右手に設置されている オルガンは、辻宏さん製作のイタリアン・バロック・オルガン。1段鍵盤で6ストップ、ペダルは1オクターブしかない。 とても小さい可愛らしいオルガンだが、この会堂にとてもマッチしている。 見たところ短い鍵盤でさぞかし弾きにくいだろうと思ったが、リハーサルをしているうちに、 オルガンと呼吸が合い歌うオルガンに変わっていく。辻さんのオルガンはいつも裏切ることなく奏者に答えてくれる 楽器だ。2005年に亡くなられたが、辻さんのお姿を想像し、またオルガンへ込められたポリシーを 感じながら演奏する私でした。高原に響くオルガンの音は爽やかに澄んで美しく、私もエンジョイ♪。

リハーサル中に礼拝堂に入っていらした方がいた。お話を伺うと近くの酪農家で牛を飼っていると。 美味しいミルクやヨーグルトをつくってらっしゃるのでしょう。すると「コンサートには来たいのだけど、 7時半ですよね、丁度牛の乳搾りの時間なんですよね〜」と。初めて聞く酪農家のお話、微笑ましかった。 こぢんまりとしたスペースで、辻オルガンを囲み、お客様と一体になってのコンサート。そして 演奏会後は教会の方々と茶話会。美味しい手作りケーキをいただき、清里の方々との交流の場も 嬉しい思い出に。お世話になりました皆様、どうもありがとうございました。

清泉寮に泊めていただくことに。2階の高さまで吹き抜けの天井、その天窓が開閉でき、心地よい 高原の風が入ってくる。緑に面したテラス、薪ストーブもある温かみのある素敵なお部屋で快適ステイ。 自然の中の露天風呂も良かったです。 地元の食材を使った美味しいお食事とともに、自然の中で美味しい空気と緑も楽しませていただきました。 帰りにヨーグルトと新鮮な取れたてのお野菜を買って帰途に。東京に帰ると暑い〜〜。

しかし、暑いとのんびりはしていられません、翌日からまた次のコンサートの準備に。 教会のオルガンのところにある温度計は30度。練習の後は、プールへ直行!!クーリング〜、体を冷やし、そして 疲れた体をリフレッシュ。皆様方は、暑い夏、どのようにお過ごしですか。 暑い日にはカレーも美味しく、最近はカレー作りにもはまっています。市販のルーなどは一切使わず、香辛料のみ。 チリ、ホットパブリカ、サフラン、コリアンダー、オルガノ、カリー、そして塩、コショー。その量は適当なので 2度と同じカレーが再現できないといういい加減な自家製カレー。 昨晩は東京文化会館でのピアノリサイタルへ。岡田将さんのオール・リスト・プログラム、 ピアノの魅力を再認識させられるような素晴らしい演奏に☆☆☆感動。細やかでありダイナミック、表情豊かな演奏に 惹き込まれ、暑さも忘れました。

さて、9月までスケジュールはびっしり。最後まで無事こなせるか、ポーランド行きもあるし、、 手帳を見ては不安にかられる私ですが、オルガンと共に、暑い夏も乗り切らなくては。 7月に入り、暑さも厳しくなってまいりましたが、どうぞ皆様方もお元気で、良い夏をお過ごしください。


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