オルガニスト楽屋話

第139話  旅 ---2012.3.24.

旅に出るのも好きだけど、出かける前の準備の時間も大好きです。 今度は何処を訪ねようか、行ってみたい所、見たいもの、聴きたいもの、手帳を見ながら 時間のとれる日程を捻出し、飛行機を予約、現地での移動など調べ、街々の情報を得、ホテルを探す。 どんな街かな〜、どんな所かな〜と想像しながら。旅行案内書やミシュランを参考に、 ネットで情報収集と予約をし、わくわくするとても楽しい時間です。

こうした旅のそもそものきっかけは、東京-大阪をほぼ毎週、また演奏旅行などでの行き来で 貯まったマイレッジで、毎年ヨーロッパまでの無料航空券をいただけるから。 なので必然的に全て自分でアレンジしなくてはならないし、自分の足で歩く個人旅行になるのです。

ドイツ留学時代の懐かしい街、懐かしい友人を訪ねたり、また各地のオルガンを訪ね歩きました。 ヨーロッパを“本場”とする私の専門分野ゆえに、研鑽の時であり、刺激を受ける時であり、リフレッシュの時であり、 1年の働きのご褒美!毎年そう思いながら。 すでにご覧くださっている方もいらっしゃると思いますが、 「Photo Album」にはそうした旅先での写真を載せています。

大抵が夏休みを利用しての旅、頻繁に行ける訳ではなく年に1度だから楽しかったし、 貴重な経験もたくさん。撮って来た写真は川口リリアホールの『パイプオルガン夢紀行』シリーズはじめ、 演奏会や様々なことにいま生かされていて、ふらふら歩いたのも、無駄ではなかったな、と。 あ、旅は継続しています!これからも続きます。

旅も、訪ねた季節、その日の天候、誰かと一緒だったり、あるいは一人だったり、、その時々の シチュエーションで街の印象も大きく変わるものですね。リピートして訪れた街でも、 その時々で見えるもの、見えたもの、印象も違ってくる。見知らぬ地での経験、美しいものに触れること、 旅先で知った各地の習慣や美味しいお味、目に見えないかたちで私の中に蓄積されていますし、きっと音楽にも 反映しているでしょう。新しい洋服を買ったり着たりするのも素敵だし好きだけど、それよりも 私は「旅」で得るものをより大切に考えます。一昨年の『ドイツ音楽ツアー』は、そんな私の様々な経験や旅への思いから実現した旅でした。

話は変わりますが、私の愛用しているお財布は『旅』がモチーフです。以前長年愛用していた お財布のスナップボタンがついに壊れてしまい、修理を出来るか尋ねたところ、小さなお財布、 しかも10年以上も使ったものなのに、「製造番号と購入されたお店がわかりましたので、 お直し出来ます。このお色の皮はなくなり貴重です、ぜひ直してお使いください」と。 何処に製造番号の刻印が押されていたのだとびっくりすると同時に、 “もの”を大切にするポリシー、良いものは直して長く使う職人気質、、 このお店の姿勢に大きな感銘を受け、修理を頼むことに。その帰り際に同じ館内で このお財布が目に留まり購入。これはタンタンとよく間違われるのですが、ホテルのベル・ボーイ。 もともとLois Vuittonは旅行用スーツケースの専門店で、当時は王侯貴族から丈夫な鞄だと尊ばれたそう。 そのスーツケースを運ぶのがベル・ボーイ、旅のワンシーン、旅をモチーフにしている限定品、旅好きの私は飛びついてしまいました。 あわててスーツケースを運ぶベルボーイが可愛いのと、中もブルー、愛用品のひとつ。

人生も「旅」、、ですね。その時、その場所で、いろんな方と出会いながら、自分の歴史を重ねていく旅。 飛行機もいいけれど、のんびり景色を楽しめる路線バスの旅もいい。道に迷った時には教えてくれた優しい人がいた。 いろんな場面に遭遇し、素敵で楽しい時もあれば、試練や困難の時もあり、、でも克服した時には喜びがある。 美しいものに出会ったり、感動しながら。人を愛し、愛されながら、助け合い愛しみ、歩んでいく旅。 私も目下人生の旅の途中、多くの人に支えていただきながら、音楽とオルガンと関わっての毎日。 一歩ずつ大切に進みながら、これからも人生の旅を続けていきたいものです。


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