第156話 NHK『ニューイヤーオペラコンサート』 ---2013.1.4.
曲目はヴェルディ『凱旋行進曲』、『カヴァレリア・ルスティカーナ』から間奏曲、ワーグナー『ローエングリン』に決定。 自宅に帰り、CDを見てみると18年も前の録音でした。楽譜が見つかるか?!探しました、、ありました! あの頃、気張って、『ローエングリン』はルメア編(←100年程前に世界的に活躍したコンサートオルガニストで、ヴィルトーゾな演奏家で超絶技巧の編曲を残している) で弾いていた私、、、『カヴァレリア』はレコード会社の委託で編曲された、手書きの楽譜でした。 さて、これで演奏する曲は決定に。
「ご衣裳はご相談させてください」・・・困った、“ご衣裳”と言っても、声楽の方のような華やかで豪華な 衣装ではなく、楽器の制約からパンツスタイル、色も私の好みはブラック。 数日後、「写真を送っていただけませんか」・・何を着ようか悩んだ末、結局選んだのは、 グレーのアルマーニのトップスに黒のパンツ。写真を撮って送りましたが、一向にお返事なし、、。 しばらくたって別件で電話が入ったので、衣装はいかがでしたか?と尋ねると「シックですね」・・いいのかな?
ステージ上では大掛かりに舞台セットの準備も始められ、車が舞台を走っていたり。。クラシックカーも セットのひとつでした。 帰り際、「最後のエンディング『乾杯の歌』の時には、ステージにお願いします」と。 え〜〜、横にいらしたディレクターさん「あれ、伝えていなかったの。。」 豪華で華やかな衣装の歌手に混じり、オルガニストの衣装では、、。日頃、オルガニストは遠い所で背中向き、 滅多に全身直立でステージに立つことはありません。それは大変〜〜。「しっかりカメラ割りも入っています」 ・・そ、そ、そんな、、ありえないです!!。「わかりました、靴だけ(オルガンシューズではみっともないので・・)持ってきます」。
車に乗り家へ帰ろうと思ったとき、やはり新年のニューイヤーコンサート、晴れの舞台のエンディングに黒のパンツでは・・ そうだ、やはりロングドレスに着替えよう、、と急に思い立ち、実家に置いてあるドレスを取りにと車を飛ばしました。 演奏会本番当日は12時にホールに入り、オルガンの音出し。その後、ヘアメイクのため、 舞台下、奈落にある暗くて細い通路を通ってホールの地下の「かつら部屋」へ案内される。 そこには鏡がずらりと並び、数名のヘアメイクさんがスタンバイしていました。 テレビ映りのためには陰影を出した方が良いと、しっかりメイク。付けまつげもお似合いになりそうですから、、と長〜いまつげも 付けてくださいました。歌手の方、バレエの方、、出番の時間に合わせ、ひっきりなしに大勢が入ってくるのですが、 発声をしている人も。お隣はバスの歌手の方でした。「髭をもう少し付けてください〜」と入ってくる方、オレンジ色の鬘を かぶるダンサーの方々、、、それはそれは賑やかな舞台裏でした。
オルガン演奏後は、エンディングのためにドレスに着替え。またお迎えの方が来て、ステージ上手へ。 「井上さんは、最前列の一番右です」と並ばされる。え〜〜最前列ですか?!!そして シャンパングラス(リハーサルでは水が入っていました)を2つ持たされるのです。「ひとつは 今、歌っている方に渡してください」「それから、『井上、答礼』と出たら、ご挨拶ください」・・「???」・・ オケピットの陰に、出演者用の電光掲示板があるのですね。 再び、オルガンの演奏用の衣装に着替え、 本番前にも再度ヘアメイク室へ。最終のメイクです。まさにオペラの出演者のような顔になっている私。 自分の顔でないみたい。。「綺麗に映っていましたよ」と。メイクさんもリハーサルをモニターでチェック してくださっていたのです。背中と腕も映りますので、、と光沢の出るパウダーをパタパタと。 「お辞儀の時に髪が顔にかかっていました」・・と前髪を軽くスプレーでとめ、また本番直前には オルガンの横まで来てくださり、最後の(メイクの)確認。
そしてロングドレスに着替えエンディング。ヘアメイクさんはステージ上でスタンバイ。本番はシャンパングラスには シャンパンらしきものが入っていて、一口飲みました、、シャンパンではなく発泡性のジュース?・・でした。 ピンクのロングドレスは、ジュン・アシダ、以前CM撮影の時に、私が選んで買っていただいたもの。 とても私費では買えない高価なドレスです。忘れもしません、赤坂のお店で、あの頃の私の体型にぴったり合わせてお直しを。 着られるかな、と思ったら、今でもぴったりでした。滅多にないドレス姿〜。
本番終わり、帰途へ。運転中に電話・・・「NHKの○○です」。何が起こったのだろう、、と
不安に陥る私。「付けまつげ、取らずにお帰りになられたようで」・・「???」。
「メイク室にいらしていただけませんか」・・「?!!」
私がオペラの作品を弾いたのは、レコード会社コロムビアのディレクターの勧めからでしたが、
この日に繋がりましたことを感謝します。これまでオルガンを弾いてきたことにも嬉しく感じた日でした。 Happy New Year!!
|