オルガニスト楽屋話

第158話 『世界オルガン夢紀行』〜ドイツ続編を終えて ---2013.2.23.

梅の花が咲き始めましたが、まだ冬本番。今年の冬は寒いです。教会での練習も寒い〜、、朝、礼拝堂に着くと 7度、外とほとんど変わらない温度です。暖房を入れると少しずつ暖まってくるのですが、 弾き始めると夜の間オルガンのパイプの中に溜まっていた冷気が外へ出てくるのですね、隙間風のような冷たい風の 動きを感じます、寒い〜。ペダルの忙しい曲から練習です。

川口リリアホールでの『世界オルガン夢紀行』、私が旅し写した写真と音楽でお届けしているこの企画の 7回目は「ドイツ続編」、昨日無事終えることが出来ました。
無事・・と言っても、実際いろいろ起こってしまいました(汗)、、 昼公演ではアンコールの 時に映す予定のハイデルベルクの雪景色、、これに変えるのを忘れ、夜公演では第1曲目シャイデマンの 画像にするのを忘れ演奏してしまいました。
2回同じ公演といっても同じ演奏が出来る訳ではなく、 2回目の公演は体が温まっていて、車のエンジンと同じような感じでしょうか、指が先に 進んでしまう、1回目の幾分硬直した出だしとは違いました。機械ではない人間のライブ演奏、 心情的なものもありますし、全く同じ繰り返しと言う訳にはいきません。
(左の写真はリハーサル風景・・)

ひとつひとつの音を大切に、客席で聴いてくださる方へ思いを籠め演奏しました。終演後にアンケートを 見せていただきましたら、「映像があり、親しみやすく、わかりやすかった」というお声を沢山お寄せいただきましたが、 実は私自身も作品の生まれたバックグラウンド(土壌)、風景、作曲家にまつわる映像を見ながら演奏すると、 その世界に入り込みやすいのです。この企画、7回継続させていただき、今では映像なしでは何だか 寂しく感じるようにさえなっています。

今回は、昨年の夏と秋にドイツへ旅しましたので、新しい写真でご覧いただくことが出来ました。 どの写真を使おうかと選び、オルガンやその地のことを調べ、トークの準備。旅のことを思い出しながらの楽しい作業でした。
(右の写真はリリアホールのオルガンの演奏台。一人3役、マイクもスタンバイ・・)

今回はレーガーの作品も演奏しました。演奏会で取り上げるのは久しぶり。マックス・レーガー、ロマン派後期のドイツの作曲家です。 一般的には馴染みの薄い作曲家ですが、小品から大作まで数多くのオルガン作品を残しており、オルガニストにとっては重要なレパートリー、 大学など試験で必ず取り上げられる作品です。10本の指と両足でようやく弾けるような分厚い和声、手と手が交差しそれにペダルの 超絶技巧、時には椅子から落ちそうになるような奏者泣かせの箇所もあり、よく練習した(というか時には戦うかのように練習した)ものです。 オルガンの醍醐味でもある迫力、力強さ、オルガンならではの音響空間も創り出すレーガーの作品、私も大好きですが、 今回はレーガーを弾いてきた中で、特にレーガーの人間らしさ、暖かさ、優しさが伝わってくる「序奏とパッサカリア、ニ短調」を 選びました。

会場でお聴きくだいました皆様、どうもありがとうございました。心より感謝致します。
そしてホール、舞台のスタッフの皆様、、、コンサートのためにご尽力くださいました。多くの方々に支えられてのコンサートでした、 ありがとうございました。

演奏家であり思うこと、、いわば看板を掲げ(私の場合は小さな看板ですが)演奏していますが、 未知数の方と出会える幸せを感じます。昨日は以前大変お世話になったオルガンビルダー寺山氏が 楽屋を尋ねてくださいました。サントリーホール、オペラシティ、墨田トリフォニーホールはじめ日本主要ホールはじめ 多くのオルガンの組み立て、調律に関わられた方です。嬉しい再会。「新しいオルガンのお披露目はいつも井上さんでしたね。 出来立てのオルガン、まだ落ち着かない時にドキドキでした」と。私も全く同じでした。
長い間、会っていなかった中学時代の友人とも再会出来たし、 今回も関西からコンサートのためだけに来て下さった私のお弟子さん、ありがとう!
こうしたお仕事をしていたからゆえに叶えられた出会いや再会がありますこと、いまますますありがたく嬉しく 感じています。
(写真右は寺山信行氏。左はリリアホールのオルガンのメンテナンスと調律をいつもしてくださっている 西岡誠一氏)



今週は「世界らん展」に御招待いただき、東京ドームへ。 豪華で華麗で見事な美しいお花に癒されました。そこでの ミニチュアディスプレイ部門で最優秀賞に輝いたのは合田一之さん(国際園芸株式会社社長でもあられます)。幼稚園 (聖ドミニコ学園)から同じ青山学院初等部へ、そして高校まで同窓生でしたが、 今回のらん展で高校卒業以来、始めて再会。奥様も同級生で、懐かしい〜。 グランプリに輝き、新聞記事を見ますと「大学卒業以来、32年間らんの世界に没頭した」そうです。 高校以来会っていなかったけれど、彼は美しい欄のお花の世界に、私はオルガンに、それぞれ好きなことに没頭し、 こうして再会出来た日をとても嬉しく思いました。
(右の写真は、合田一之さんのグランプリを受賞された作品です。)

多くの方に支えられ、励まされ、こうした今日がありますこと、一公演を終え、皆様に感謝し、また次へと進んでまいります♪


(次回の『夢紀行』は「バッハ編」で、6月27日(木)開催されます。皆様のご来場をお待ちしています。)




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