オルガニスト楽屋話

第187話  春近し ---2015.2.21.

梅の花が開花し、春もそこまで。でもまだまだ寒い日が続いています。教会の中は外と同じ気温、 練習はペダルの活躍する曲から始め、体を温めます。寒い季節、家での練習は時によってはこの通り、 横着にも室内履きで。横にはホットティー(コーヒー)を置いて。

私の横着ぶりといえば、教会での練習中に、車を移動しなければならない時があります、駐車場内ですが。 これまた横着にもオルガンシューズのまま外へ飛び出し運転してしまいますが、足の裏とフットペダルへの 感触は敏感で、普通の靴とはまた違った感触での運転に(笑)。・・・(お弟子さん方、どうぞこれらのことは 見習わないように、きちんとオルガン・シューズを履いて練習してくださいね!)

右手左手を使うピアノ演奏は、脳を刺激し、認知症予防になると最近よく聞きますが、 オルガン演奏は右手左手に加えて両足です〜・・・脳を若く保つ効果大かもしれません。

さて、「オルガン」と言っても楽器一台一台違います。長い歴史、様々な風土、土壌の中で生まれてきたために、 多種多様な様式のオルガンがあります。
私がいまコンサートの企画や講座などで関わらせていただいている内、 2つのオルガンは日本のホールにあるオルガンとしては、規模も様式も両極端に位置する楽器であることに 気づきました。

一つはキングズウェル(山梨県) のバロック・オルガン。J.S.バッハの時代に活躍した名オルガン製作家ジルバーマン のオルガンを基に、歴史的な建造法で再現されたオルガンで、1段鍵盤とペダルという 小さな楽器ですが魅力ある美しい楽器 (写真左は、先週の演奏会の時に。この日の演奏はこちらからも聴けます)

一方、白石ホワイトキューブ(宮城県)は日本で最も長い残響のあるガラス張りのホールに製作された日本唯一のシンフォニック・オルガン。 右の写真は演奏台ですが、まるでコックピットのよう。見たところ5段鍵盤ですが、実際には6つの鍵盤があり、それにペダル。 スウェル・ペダルも3つ(全ての鍵盤、音量調節が出来ます)、それにクレッシェンド・ペダル。115ストップに、沢山のコンビネーション・ノブ・・ 全て演奏しながら操作します。 最弱音pppから最強音fffまでダイナミック・レンジの幅が広く、繊細な音から力のある低音も出せ、迫力のあるオルガン、 ロマン派、シンフォニックな作品を演奏するのに適しています。一部、電子音も効果的に駆使され併用されているという現代的な楽器。 専門書でしか知らなかった音色も、ここにはあり、再現出来ます。

この2つの楽器、いかがでしょうか、同じ「オルガン」と一括りに言うのは難しい程、大きな違いがあります。 ピアノであれば、ヤマハもスタインウェイもここまでの違いはないでしょう、オルガンの 場合は別の楽器と言っても良い程の違いがあります。素朴な美しさ、ダイナミックレンジが広く 迫力のあるオルガン、どちらも楽器を生かし、また楽器によって生かされる作品があり、特徴をもったオルガンこそ曲を選びます。 2つの性格の異なる楽器に関わらせていただけ本当に幸いです。

オルガン・プロムナードコンサートの企画監修をさせていただいています、もうひとつのホール、 川口リリアホール。 ネオバロックの素晴らしいオルガンです。こちらも春を前に、来年度のラインアップが出揃いました。(詳しくは <info>の ページをご覧下さい。)

いま、教会暦では受難節。バッハはじめ受難のために書かれた優しく切なく悲哀に満ちた美しい作品に、涙するような心地になります。 そうした美しい作品を演奏出来る季節でもあり、この季節にしか演奏出来ない曲、というのがある訳です。 クリスマスの曲をほかの季節に弾くとおかしいように。。 音楽にも季節がありますね。教会暦や音楽の季節感に沿いながら弾いている私達オルガニスト、 演奏家の中でもとりわけ季節感があるかもしれません。
目下、受難の曲を演奏、準備で頭がいっぱいの私に、昨日は、綺麗な雛あられのプレゼント。 忘れていた日本の季節感を思い出させくれました。春を感じる日本的行事にも心和みます。オルガニスト、ヨーロッパと日本と、 季節感もtwo-wayで・・。

さて確定申告もこの時期です。弾かせていただいたり、出演させていただいた各所から支払調書が届き、1年を振り返る季節でもあります。 振り返りつつ、新しい年度に向けて前進。
今回のメッセージは春を前にした私の近況からでしたが、春近し、訪れる春を楽しみに待つこの頃、皆様にも良い春の訪れがありますように!


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