第216話 スロヴァキアでの演奏会 ---2018.8.21.
今回はスロヴァキアで3公演とドイツのドレスデンでの演奏会、4つの演奏会に招いていただき、渡欧しました。 チェコは何度か演奏で、また旅行で訪ねていますが、スロヴァキアは初めて。オーストリアとハンガリーに隣接し、 ウィーンからスロヴァキアの首都ブラチスラヴァまでたった60キロ、バスで50分と近く、ウィーン経由でスロヴァキア入りしました。 ブラチスラヴァで迎えてくれたのは、最初に演奏会をするモドラという街の若い女性オルガニストとそのお父さん。 早速、美味しいスロヴァキア料理のランチで迎えてくださり、その後、リハーサル。そして宿泊し、また演奏会もするトゥルナヴァという街へ さらに車で30分走り、送ってくださいました。予想外に気温が高く、ハードなスケジュールの長い初日で、スロヴァキア滞在は始まりました。 6日間宿泊したトルナヴァの街は町中お花がいっぱい、薔薇の香りがする買い物通り。 教会の鐘が毎時を告げ、静かで落ち着いた街。
モドラでは、第5回オルガン・フェスティバル、オルガンはRieger op.15 (1875年)、2段鍵盤とペダル18ストップ、メカニックアクションで、
フルートが美しいオルガンでした。美しく良く響き歌う楽器でしたが、鍵盤が重く固いことと、ペダル鍵盤の位置が
ずれている(通常より幅広い、高音部、低音部にいくと通常より遠い感覚)、慣れるのに少し時間が必要でした。でも演奏会では慣れて心地良く演奏。
(左の写真はトルナヴァでの演奏会の時に。) 歴史を感じる教会とオルガン、そしてオルガンのあるバルコニーまで登る石の階段も真ん中がへこんでいる、 いつものことながら、鍵を渡されるのですが、古い鍵、、大きく重く古い扉の開閉もなかなかのテクニックが必要。 50キロ離れた2つの街を暑い中、冷房の効かない車で行き来し、教会の中も経験したことがないほどの蒸し暑さになり、 規模も様式も全く 違う3つのオルガンでの連日の演奏会は、思ってた以上に大変でした。
3つ目の公演は、街の中央広場にあるカテドラルで。毎日早朝から夜までミサがあり、お祈りに来る人も絶えないこのカテドラルでは、練習は夜の7時以降だけ。 2003年に現代的な建物に改築された現代的デザインのこの教会、オルガンも同じく2003年に完成した新しい楽器(3段鍵盤とペダル、34ストップ)、 メカニカル・アクションでコンビネーションも沢山ある パワフルなオルガンでした。セキュリティもしっかりしていて、夜間遅くまでの練習も心配はなかったのですが、 2つの公演後、体は想像以上に疲れていて、前日夜の練習では、指が全く思い通りに動かなくなる、、普段の私と全く違う、、、音楽作りの余裕もない、、 こんな状態で明日は本当弾けるのか?経験したことがないようなパニック&ストレス に入り込んでしまい、悪夢のような夜を過ごした私。
曲間で(曲の解説のトークが入るというので)ミネナルウォーターを飲みながら演奏。演奏している姿が、スクリーンに写し出されるシステムも完備されていました。 無事、演奏が終わり、大きな拍手とブラボー!までいただき、厳しい中での演奏会だっただけに、無事終えられたことに、そして自分の思い通りの演奏ができたことに 、ホッと肩を撫で下ろす私。
滞在中、フェスティバルの企画者、各地でアテンドして下さった方々、宿泊したアパートメントのオーナーさん方、、
人の親切さは並離れていました。これまで多くの国々で親切にしていただきました。隣国のチェコやポーランドの人々もとても親切でしたし、
日本人も親切とよく言われますが、今回接したスロヴァキア人の親切心、奉仕的な気持ちに比べると比ではありません。教会はいつも祈る人の姿があり、
敬虔なクリスチャンが多い国だからでしょうか。
そしてWifi天国でした。ホテルやレストランはもちろん、街中屋外でもWifi利用可能。教会の中でも連絡出来、便利でした。 スロヴァキアでの3公演を終え、最終日は首都のブラチスラヴァで2日過ごし、最後の晩に雷雨、初めての本格的な雨で 、気温も一気に17度。20度も下がり、ようやくヨーロッパらしい気候に。 ブラチスラヴァの中央駅から列車でドレスデンへ。大きく重いスーツケース、駅の階段で困ったなと苦労していたところ、 小柄で華奢なおじいさんが手伝ってくれ、最後の最後まで親切心に溢れていたスロヴァキア。観光の旅とは違う、 人との交わり、人の心に接することが出来た特別な旅になり、こうした旅が出来る私は幸せだなと思った初めてのスロヴァキア公演でした。
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