オルガニスト楽屋話

第238話  コロナ禍での企画コンサート ---2021.7.18.

東京には第4回目の緊急事態宣言が発令され、感染者も増加傾向が続いています。私も1回目のワクチン接種を受けました。ワクチンが普及する頃には 出口も近いと信じで過ごしてきましたが、なかなか先が見えてきません。長引くコロナとの生活ですが、お疲れ大丈夫でしょうか。
川口リリアホールでの『ワンコイン・パイプオルガンコンサート』、海外から演奏家をお招きし企画していましたが、3回の演奏会が 中止や延期になってしまい、昨日はなんと1年10ヶ月振りの開催でした。

久しぶりの開催にふさわしく、バロック音楽の大家であり、オルガン音楽の原点でもあり、バッハ無しではオルガン音楽は語れない、、そんなJ.S.バッハの作品を存分に お聴きいただく企画になりました。 演奏者には日本若手オルガニストを代表するお一人、またバッハ全曲演奏などスペシャリストでもある椎名雄一郎さんをお迎えして。 緊急事態宣言下の東京を南から北へと縦断し、ホールへ向かう私。梅雨も明け快晴の夏日、感染者数も増えているし、オルガンを聴きに、、果たしてお客様はいらしてくださるのか、、 など心配も胸に車を走らせました。

椎名さんのリハーサル、最後まで念入りなストップ選びやタッチの確認に時間を費し、繊細なタッチから美しく素晴らしい音楽が紡ぎだされていく。ホール中央に座り、降り注ぐ音、 体全体に音のシャワーは最高の心地。演奏台では、実はこんな音は聴けないのです。そして自粛生活で毎日オルガンを弾いている私ですが、 このオルガンの音に全身を包まれる感覚は久しぶり。椎名さんの美しく、繊細であり、そして迫力の演奏を聴き、これはお客様に一押しの演奏会になると一層強く確信する私でした。

演奏前に短いトークがあったので、私はステージ袖にあるモニターで会場の様子を見ていたのですが、そして迎えた開演時間、ホールは満席に! 1席も余すことなくいっぱいに埋め尽くされた客席、そしてホールのスタッフからの指示通り、お喋りもせず静かにコンサートの始まりを待っていらっしゃるお客様。 50%の制限かと思っていた私ですが、ホールスタッフに尋ねると、無言で聴くクラシックコンサートは100%の集客も可と行政から指導を受けているとのこと、納得。 とはいえ舞台スタッフもモニター画面を見て「こういうの、久しぶりです」・・と小声で。

椎名さんはとても気さくな方で、演奏前にもかかわらずステージ上でのトークにも応じてくださり、(実は年は大分離れますが、同じ高校卒業、、)、オルガンとの出会い、バッハの魅力などなど ほとんど打ち合わせもしていなかったのですが、話は弾んでしまい(多少予定時間を押してしまいました、、)、その後私は客席へ移動し、お客様と共に演奏を聴きました。 素晴らしい演奏に魅了され、また聴き入ってくださる会場いっぱいのお客様の姿を見て、私の心の中は嬉し涙で溢れました(←滅多にないことです)。 これは自分の演奏会では得られない、喜びと感動でした。

それにしても、日本人は本当にお行儀良く、節を守りますね。オリンピック関係で来日し、マスク無しで外を出歩いている外国からの方がいると聞きますが、、。 そして沢山の拍手の後、順番に静かに退場。お客様も素晴らしかったです。

そして、開館以来、20数年にわたり、オルガン企画を続け、チラシはじめプログラム作成、告知や宣伝、舞台裏またCD販売のお手伝いまでしてくださり、多くのご尽力と心配り、そして何事も完璧なプロ技、 さらには感染対策に万全を尽くし、館長様、事務局長様がホール入り口でサーモグラフィ(新しい機材が導入されていました)を使い整えた体制で来場者を迎えてくださり、 ホールスタッフ総勢で対応してくださる姿に開催への主催者の熱意と情熱を感じました。

私自身、オルガンと共に過ごしています、コロナ禍でも私一人でオルガンと向き合う(個人的に満ち足りた)生活をしています、、が、こんなにも多くの方が、オルガンに関心を持ってくださっているとは、 正直驚きでした、コロナ禍ゆえ人は心の癒しを求めていたのでしょうか。昨日のコロナ禍での「オルガンコンサート」は、私を後押ししてくれ、 生きる力を与えてくれました、感謝!!






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