オルガニスト楽屋話

第239話  音楽の力 ---2021.9.26.

夏も過ぎ、秋の気配が感じられるこの頃になりました。出口がなかなか見えない、感染症との戦い、マスク生活も長くなり、なかなか日常は取り戻せませんが、 私は体調を崩すこともなく、元気に過ごしています。ワクチン接種も2回無事終わりました。1回目は翌日少し腕がだるかったのですが、 接種の前後に水分を沢山(1000ml)摂るという友人からのアドヴァイスが良かったのか、2回目は副反応、全くなし。心配した翌日も早朝から夜まで、全ての予定をこなすことが出来、 時間を無駄にすることなく、得した気分でした。しかしながら、ワクチンが普及すれば元の生活に、、と期待していましたが、なかなかです。

国境を越えられない辛抱の夏も2回過ぎました。私を含め演奏家、音楽家の方々、楽器を弾いたり、勉強したり、やりたいことは山のようですから、自分の時間は有難く、 自粛生活、家籠りも特に苦ではないのですが、この鎖国状態だけは辛いものがあります。YouTubeやCDで聴くヨーロッパの美しいオルガンの響きは、今の私にはとりわけ美しく響き、また ヨーロッパのカテドラルや教会の響きに包まれたいと願います。延期になっているドイツの演奏会の主催者から、来年度2022年はいかがですか、、と。 出入国時の隔離規制がとれない状況、ドイツは日本を渡航危険地域に入れている今、悩んだ挙句、2023年にと返事を出した私です。

日々、音楽と共に過ごしている私にとって、音楽は空気のような存在で、これまで特に感じることもなかったのですが、 そんな私ですら、音楽に癒される、音楽っていいな、音楽の力を感じます。友人と会ったり、出かけたり、そうしたお楽しみの時間は なくなり寂しいですが、シンプルに自分の人生を楽しむ、自分の生き方を探しているのかもしれません。

さて、身の回りの変化と言えば、いよいよ、13年という長い年月、愛用した携帯電話(ガラケーです!)とさようならをし、iPhone13へ。 まだガラケー?!と皆に驚かれるのですが、iPad miniと併用し、電池の消耗も少なく、海外での電話料金も安いガラケーは特に不便もなく、むしろ私には好都合でした。 ただ、買い物などでアプリを使うときに、レジで片手で持てないiPad miniは落としそうになり段々不便に、また2台持ちをそろそろ1台にしようかな、と。海外ではiPad miniをPC代わりにしていましたが、 しばらく海外へ渡航しないとそのメリットも感じられなくなったことも一理です。
そもそもガラケーからの機種変更ですから、機種にこだわったわけでないのですが、たまたまiPhone13の発売開始と重なり、 発売翌日に新発売のiPhoneが手元に届くことに。新色の淡いピンク色は、お気に入り。長年、共にいて活躍してくれた携帯電話、色んな地へ旅もしたね、 色んなこともあったね、お疲れさま!ありがとう!!

夏に買ったお気に入りのサンダル。ドイツの街角、靴屋さんでよく見かけるBirkenstock。ドイツの友人や知人も履いていたし、ドイツ人の家の玄関によく このBirkenstockのサンダルが転がっていました。履き古したサンダルも愛用している人もよく見かけたし、靴下を履いてこのサンダルを履いている人もいて、面白い履き方をするのだな、と思って 知ってはいたサンダル。ただ これまではこのがっしりとした大きめのサンダルには特に惹かれることもなく、イタリア製の華奢なデザインの方が好みだった私です。今年は履き心地を優先、 そしてこのがっしりデザインにも惹かれ。ヒールのお洒落サンダルを履いていく場所や機会が、このコロナ禍でないというのも理由もあるかもしれません。 洋服や靴を日本で買うことはほとんどない私が、ドイツの靴を日本で買うという、これもこれまであり得ない夏。定員さんの女性は、 サイズの選び方、履き方まで丁寧に説明し、足に合ったものを選んでくださり、ドイツで修業をした、、とベルリンの話が始まりました。サンダルにも伝わるこのマイスター・クラフト、 あたかも薬局や医療用のロゴマーク、良いものを長く大切に使うドイツ人の気質も伝わってきて、ドイツを感じつつ履き心地の良いサンダルで過ごした夏でした。

話は全く変わりますが、このところ、教会でのご葬儀、お別れの会、記念会が続いています。教会での礼拝ですので、前奏、後奏、そして献花(や飾花)の時の奏楽で、毎回 楽譜を引っ張り出してきて曲を選び、分厚い楽譜にマーキングしたりコピーしたり。演奏時は譜面立てやオルガンの椅子の上に楽譜がいっぱい。教会のオルガンはバルコニーにありで後ろ向きなので、 毎回献花の進行具合など見ながら弾きますが、今回、『ご葬儀のためのマイ・ベスト・セレクション』・・とっておきの美しい曲ばかり選び、20曲ほどの今日をコピーし製本しました。 毎回、ご葬儀の連絡が入ると慌てて楽譜を探していましたが、その必要もなく、譜捲りも片手で簡単に出来、最期の和音を伸ばしながら、次の曲へ切れ目なく進むことも出来ます。 便利だし、これからも使える。私の葬儀の時にも弾いてもらいたい曲ばかりです(笑)。

音楽は人の心に寄り添います、とりわけオルガンは相応しい楽器であるとずっと言ってきた私にとって、慰めのシチュエーションでオルガンを弾いて、と用いていただけますことに 生き甲斐を感じます。ここにも音楽の力、大いにあります。このコロナ禍で感染症でない他の病で入院しても面会も出来ない闘病生活、最期も看取れず天へ昇られたというお話に涙が溢れそうになりました。 愛する家族を天に見送り寂しさの中にある人々に慰めを、そして天上に昇り生涯を全うされた故人に私の音楽と祈りが届きますように。一昨日も一音一音に心を籠めて弾かせていただきました。 そうしたことが出来る私が今いることに、感謝です。どんな時も、音楽の力を信じ、生きている限り私に出来ること、進めていきたいものです。感染症が収束する日は必ず来ます、希望を持って。






Index