オルガニスト楽屋話

第43話 時代を越えて ---2001.1.28.

パイプオルガンは笛の集まり。鍵盤を押すと、ふいごで作られた風が 笛に送られ、音が鳴ります。そのはじまりは紀元前とも言われ、長い歴史を持つ 楽器です。電気のない時代(例えばバッハの頃)には、人力でふいごを 動かしていました。その後、電気に代わったことは言うまでもありません。 長い歴史をたどると、各地の風土や時代にあった様式のオルガンが 生まれてきたものの、楽器の基本的な構造は、過去500年間ほとんど変っていません。

最近のオルガン、特にコンサートホールなどに設置されるような 大きなオルガンには、演奏補助装置として現代的な新しいシステムも 取り入れられてきています。 オルガニストは演奏前に、どのストップを使って演奏するか を決める(レジストレーション)のですが、それを記憶させる仕掛け (コンビネーション)が大きなオルガンにはあります。さらに 最近では「メモリーカード」を使い、記憶させた音色を自分のために 保存しておくことが出来るのです。 コンサートホールのように、複数のオルガニストが演奏する所では 大変便利です。 以前は紙に書き留めておいたりしたのですが、大きな楽器ですと、3時間の リハーサルのうち30分もの時間をさいていました。このカードのお陰で、 貴重な時間が有効に使えるようになりました。

古いものがどんどんと新しいものに代えられていく時代の流れの中で、 2000年もの間オルガンは、それぞれの時代に応じた要素を 加えつつも、変わらず存在しています。ピアノの歴史は300年です。 先端技術や目新しいものに追われる世の中においても、頑固として ゆずらないオルガン・・時代を越えて人々に愛されているゆえだと思います。

21世紀という新しい世紀を迎えました。今世紀の終わりは私には見届けることは 出来ませんが、今世紀もオルガンは生き抜いていくことでしょう。

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