オルガニスト楽屋話

第77話 50回目のサン=サーンス ---2006.2.17.

1月15日、小林研一郎さん指揮、日本フィルと演奏会。日曜日の朝は人も車も少なく静か、冷たく 澄み切った空気の中、車を飛ばし約25分、午前9時半サントリーホールに到着。 「おはようございます!」楽屋口の守衛さんとも顔馴染み、さっとオルガンの鍵を渡してくれます。 レジストレーション(音色作り)も慣れている楽器、慣れている曲なので15分もあればできるのですが、オーケストラの メンバーが音を出し始める前の静かな空間で、 また大きな音もするので迷惑をかけないようにと思うと、こうしていつも一番乗りです。終わった頃、 ステージの上では慣れたステージマネージャー達により椅子や譜面台のセッティングが始まり、 照明のチェックやモニター(指揮者を見るための)のセッティングなど準備はスムースに進んでいきます。

11時からゲネプロ開始、一通りの演目を練習しますが、事前に別の会場でリハーサルはしているので 主にホールの響きに合わせた最終の音楽確認、そしてバランスのチェックです。しかし私にとっては この楽器でたった一回のリハーサルになる訳ですから、神経を使う緊張した時間です。 やれやれ、リハーサルも問題なく無事終了。 その後、舞台裏で今日の演奏を聴く小さなお子様方とそのご父兄に、オルガンについてお話をしました。 音楽評論家の奥田佳道さん率いる「オーケストラ探検隊」という企画です。そして実際に演奏台の所へ移動、どんな 楽器かなと集まってきた好奇心旺盛で目をきらきらさせたかわいい子供たちでいっぱいになりました。

サン=サーンスの交響曲第3番は別名「オルガン・シンフォニー」と呼ばれ、親しまれている名曲です。 普通の楽器編成に加えオルガンが使われているところも、この曲の魅力のひとつでしょう。 オルガンは大音響で迫力のあるところと、静かな祈りのようなところに登場しますが、 オーケストラを支えつつ、オルガンの魅力を発揮しとても効果的に現れます。オルガニストでもあったサン=サーンスは流石ですね、 上手い使い方をしています。

これまで数多くの演奏会に出演させていただきましたが、今回は私にとってちょっとした記念!・・「50回目」の演奏会でした。 日本フィル、東京交響楽団、読売交響楽団、札幌交響楽団、名古屋フィル、プラハ放送交響楽団、フランス国立リヨン管弦楽団、香港フィル などたくさんのオーケストラと共演させていただきました。 ジャン・フルネ、ルイ・フレモー、デプリースト、D.シャローン、E.クリヴィヌ、小林研一郎さん、岩城宏之さん、大友直人さん、 佐渡裕さん、飯森範親さん、沼尻竜典さん、広上淳一さん、三石精一さん、はじめ多くの素晴らしいマエストロとの出会いもありました。 サントリーホール(19回)、東京芸術劇場(12回)、そのはかオペラシティ、新宿文化センター、横浜みなとみらいホール、 大阪シンフォニーホール、愛知県芸術劇場、札幌コンサートホール、香港カルチャーセンターホールなど各地のホールの様々なオルガンで 演奏を重ねてきました。今回も遠くは北海道や九州から聴きにいらしてくださったお客様がありましたが、50回の間にはどのくらい 多くの方々に聴いていただいたことでしょう。ソロの演奏は私の希望で選曲できますが、 サン=サーンスは私一人では演奏できないのですから、毎回の演奏会が本当に貴重な機会でした。演奏回数は多くてもオーケストラや指揮者により 演奏は毎回違います。音楽はいつも新鮮であり、また演奏会に向けての緊張感はいつも同じです。自分の中での完成度が高くなれば なるほど、さらなるものを要求し、緊張感も強まっていくものです。 50回目の演奏は、オーケストラとオルガンが一体になり、コバケンさんの指揮でさらに高揚し集中した素晴らしい演奏に終わりました。 会場全体も大きな感動に包まれたようで、たくさんの熱い拍手は嬉しかったです。何度演奏しても素晴らしい名曲、 これからもまた多くの方々に喜びと感動を伝えていきたいものです。

さて話は変わりますが、お引越しをしました。見た目には何も変わっていませんが、サイトのお引越しです。これまで フランスにあるサーバーを使っていましたがそれを日本に移しました、そして2ヶ所に分かれて置かれてたデータをまとめました。 長い間愛用した私のパソコンもご老体になり、新しいHpのパソコンを購入、それと同時に古いパソコンからデータを移動。 大仕事でしたが、ようやく落ち着きつつあります。ささやかながらのサイトですが、今後ともご支援よろしくお願い致します。

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