オルガニスト楽屋話
第85話 スゥィートな国、ベルギーでの演奏会 ---2007.5.5.
5月27日ペンテコステ(聖霊降臨日)の礼拝でオルガンを弾き、翌朝早くに羽田を出発、今回は関空からフランクフルト乗り換えでブリュッセル空港へ。
2回乗り換えしようやく到着したと思ったら、2つ預けたスーツケースのうちのひとつが待てど暮らせど出て来ない〜、、フランクフルトの巨大な
空港での1時間の乗り継ぎ時間は、人間はぎりぎり間に合ったものの、荷物は乗り遅れたのです。荷物一つないまま心配と寂しい気分で街へ、、
時差があるから月曜日のはずなのにお店もぴったり閉まり街も寂しく静まりかえっている、、、ベルギーはペンテコステの翌日の月曜日も休日だったのですね。
深夜12時近く、スーツケースはホテルへ届けられ、やれやれ。今回はブリュッセルで2つのコンサートのために訪れたのですが、
こんなハプニングありのスタートでした。
翌日からフィニステル教会とペテロ教会の2つの教会での練習開始。フィニステル教会は街の中心にあり、お祈りに来る人が多く夜6時
以降しか音が出せないので、毎日昼と夜の2部制でリハーサルをすることに。ペテロ教会はメトロとトラムを乗り継いで行く所にありました。
1年前にはなかった新型トラム、地下鉄の終点の駅が1駅伸びていたり、工事していた駅が奇麗になっていたり、、、少しではありますが、
懐かしい街にも変化が。そしてまたこの地を訪れることができた喜びを感じました。
教会での練習中、時を告げるカリオンの華奢できれいな音が頭の上から鳴り響きます。ドイツの教会とも違う、、ここは
ベルギーなのだと。2つの楽器とも100年以上前の歴史のあるオルガンで、これまで弾いたことがないような楽器です。
慣れないシステムの楽器でしたが、不思議なことに予想以上に短時間で仲良しに!!そして自然な息づかいで歌うオルガンに惚れながら、
日本では経験できないような音色、響きを楽しみながら練習の時を過ごしました。柔らかく、暖かく、それから低音が良く鳴ります。
固い音、鋭い音はなく、ほんわりと包まれるような音色です。例えば同時代の作曲家ヴィエルヌを弾くとこういう響きになるのかと、
ヴィエルヌの時代にタイムスプリット!!、曲のイメージをさらに膨らませていきました。
フィニステル教会のオルガニストであるグザヴィエ・ドゥプレさん、奥様でオルガニストの桃代さんはとてもお優しいお人柄で、
オルガンの優しい音色はお二人はじめベルギー人の気質とも似ているなと思うのでした。
そして街を歩いていると、甘〜い香りがぷ〜んとしてきます。ワッフル、クレープ屋さん、そして奇麗に並んだチョコレートやクッキー、、、
この甘い香りもベルギーの優しさに通じるところがありますね。
日頃の東京での感覚と比べると、ベルギーのペースはのんびりしているなと思うことも多いのですが、人々は生活を楽しみ、
また親切に人を思いやる心の余裕があり、そこには日本にはない豊かさがあるなと感じるのでした。夜8時からの公演後、
翌日はお昼の公演と連日2日の公演はちょっと大変でしたが、教会のオルガニスト、関係者の方々には準備、
そして演奏会当日と大変お世話になりました。遠路ドイツから、そして日本から聴きにいらしてくださった皆様にも感謝です。
スイートな国、ベルギーでの演奏会、優しさに支えられ無事終わりました。
(右の写真は、ペテロ教会でのコンサート後に)
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Jetteのペテロ教会の会堂。 |
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オルガンの裏にあるこのペダルを踏み、ふいごに空気を送っていました。今は電気で動いていますが、この足踏みも現役!演奏できるそうです。 |
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フィニステル教会の演奏台。下の装置は鍵盤を連結するカプラー、そしてスウェルペダル(シャッターを開閉し音量調整する装置)もこの棒状で、
しかも通常の逆で押し込むと閉まります(音量が弱くなる)。 |
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フィニステル教会の会堂。 |
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