オルガニスト楽屋話

第87話  「千の風になって」オルガン伴奏版 ---2007.9.17.

♪朝は鳥になって、あなたを目覚めさせる♪
♪夜は星になって、あなたを見守る♪
秋川雅史さんが歌う『千の風・・』の私の好きなフレーズです。この曲は今や国民的唱歌ですね。

NHK・BSテレビ番組『叙情歌大全集』を担当するディレクターから、NHKホールのオルガンを使って、 『千の風』をオーケストラとオルガン伴奏でという出演依頼が。どんな編曲になるのだろう〜と 待つこと数週間。収録の1週間前、楽譜が送られてきました。電子音ですが楽譜が音になっているCDも同封され、 なんて親切でありがたい。どんな新曲もコツコツと譜読みをしているクラシックの世界ではありえないことです。

当日の衣装は「天使をイメージして、全身“白”でお願いします」と。真っ黒に日焼けしている 私は、電話口で声をつまらせながら「は、は、はい」と。
スケジュール表を見ると、朝10時からオルガンのサウンドチェック、 その後、秋川さん、オーケストラとリハーサル。午後はCR。「CRって何ですか?!」「カメラ・リハーサルです」 なるほど。衣装を着て、収録本番と同じようなリハーサルのことでした。なにかといつもと勝手が違います。

さてリハーサル開始、初めての合わせです。オルガンはステージから遠く離れた高い所。いつも指揮者に挨拶するような 習慣でステージ上の秋川さんに会釈をすると、秋川さんからも会釈が。始まりは オルガン・ソロで。素敵なパッヘルベル(バロック時代の作曲家です)風イントロです。重厚な響きでお願いしますと編曲者から。 これは予想通りの始まりだったのですがその後、通奏低音風な伴奏部、つまり和音が続く譜面だったので きっと他の楽器と一緒になるのだろう、、と予測していたのですが大違い、秋川さんと私だけに。1節はオルガンだけでの伴奏でした。 あわてて少しストップ(音色)を変更。シンプルながら、なかなか素敵だなと。その後は、コーラスも入り何とも贅沢な伴奏に。そして最後はオルガン・ソロになり、 しっとりとしたエンディング。美しい編曲で、とても楽しく演奏できました。ジャンルを越え、 音楽する喜びは同じですね。(右の楽譜はオルガンパート譜の1ページ目です)


「そらのうえで おんがくかいをしています。
くもにのって、きれいなおんがくが ゆーらゆーらゆれています。」

私が小学校1年生の時に書いた絵です。オルガンの存在すら知らなかった私はピアノを弾いてます。 幼く下手な絵ですが、あの幼い頃に心に描いていたこと、気持ちは、今も持ち続けずっと変わっていなのだな〜と。 みなで合奏したり、演奏したり、楽しく音楽すること、昔も今も大好きです。 人の気持ち、根底にあるものは変わらないのですね。

暑くて長い夏でした。台風がもたらした大雨の日は、我が家の前の多摩川はかつて経験ないほど 増水し、いよいよ水没するかと慌てました。私が時々泳ぎに行く50Mプールで、振り向く度にいつも 私の後ろにぴったり付いて泳いでくる男性が。私は遅くて迷惑していると思い「お先にどうぞ!」と言うと、 「きれいな泳ぎです。決してストーカーではありませんから」と。一定ペースで泳ぐ私は指標になるという ことらしいけれど、オルガン♪で追っかけして欲しいと心の中で笑ってしまいました。いろんなことがあった 夏も終わりです。年の瀬までに演奏する曲目も決まり勢揃い、その楽譜が今私の部屋に散乱しています。 まとめるとずっしりと重く、これからこの曲達とクリスマス、年末まで過ごすことに。 秋への季節の変わり目、また新たな意欲に燃えています。


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