オルガニスト楽屋話

第151話  ドイツ音楽ツアーから帰国しました ---2012.10.21.

第2回目の音楽ツアー『井上圭子さんと行く錦秋のチューリンゲン、ザクセン地方とバッハゆかりの地』・・ (自分で書くのは少し恥ずかしいのですが、、)10日間のドイツ滞在から昨日帰国しました。 この長いタイトル、命名は私ではありませんが、途中から長いので短縮され記載されることに(例えばバスの前)。

振り返ってみると、沢山の地を訪問しました。これは個人旅行ではかなえられないことで、希望の訪問地、 アクセスの悪い教会などへもMercedesの大型バスで、効率よく訪ねることが出来たからです。 各所で音楽、建築、絵画・・沢山の“美”を見聞し、凝縮された時間でした。

一人旅とは違い、参加者の皆様とわいわい賑やかに。楽しい一方、私がこれまで素晴らしいなと心動かされた所やお奨めの場所へ ご案内する旅企画、果たして喜んでいただけるか、ドキドキしながらの旅でもありました。

訪れた街々はどこも美しい秋色で、まさに錦秋のドイツ。歴史があり響きの良い教会で数々の美しいオルガンを聴き、 また演奏会ありオペラあり美術館見学あり、聴いたもの、見たもの、共に感動を分かち合いながら、 またハプニングあり笑いありの10日間でした。

添乗員さんと私を含めた一行19名は、10月11日ルフランクフルト空港に到着、日本より一足早い美しい紅葉が 私たちを迎えてくれました。そこで現地ガイドの市川さんとバスの運転手Peterさんと合流し、約3時間、 アイゼナッハに到着。旅はバッハが生まれた街、また宗教改革を起こしたマルティン・ルターが住んでいた街、 アイゼナッハから始まりました。

翌朝は郊外の山の頂きにあるヴァルトブルク城へ(写真右上)、世界遺産にもなっているこのお城には、ルターが聖書を ドイツ語に訳した質素な部屋も。以前、私は一人旅でこの街の中央駅まで鉄道で、 そして7、8名乗りの小型の路線バスと徒歩で登り、とても大変な思いで訪れた時のことを懐かしく思い出しながら、 今回は参加者の皆様と紅葉を楽しみながらお城へと散策しました。

その後、アイゼナッハの街へ戻りバッハが幼児洗礼を受け、また幼いバッハが伯父ヨハン・クリストフ・バッハの 弾くオルガンを聴いていたゲオルグ教会へ。そしてバッハの生家があったルター通り35番地の前を通り、 バッハ家が住んでいた界隈にあるバッハ・ハウスへ。以前訪れた時にはなかった新館が併設され、 展示もモダンに。幼いバッハはこのあたりで幼少時代を過ごしたのでしょう。

午後からは、アルンシュタットの通称「バッハ教会」へ。バッハは18歳でこの教会のオルガニストに就任し、 この教会のヴェンダーオルガンはバッハ自身が鑑定した楽器です。またこの街からリューベックまで、 バッハはブクステフーデの演奏を聴きに出かけた逸話は有名です。

そしてヴァルタースハウゼンへ。お約束をしていたオルガニストのハインケ氏(思っていたよりお若い方でした)と会い、 チューリンゲン地方の最も大きなバロックオルガンであり、最も傑出したトゥロストオルガン(1755年)(右の写真)を、 私と参加者の中からオルガニストのお二人が試奏させていただきました。恵まれた貴重な時でした。 パイプの大半が当時のまま保存されているという楽器は、ストップが鍵盤の周りをぐるりと囲むかたちで配置され、 歴史的なオルガンの鍵盤は重く、またペダルは幅が広く、低音や高音は足がやっと届くほど遠いのですが、 その暖かい音色、18世紀のオルガンの響きを体験出来、感動しました♪

その夜はエアフルトに宿泊し、翌日10月13日お昼から、バッハ自身が落成式で演奏し、鑑定したナウムブルク、 ヴェンツェル教会でのオルガンのコンサートを聴きました。ヒルデブラントのオルガン(1743年)(左の写真です)のケース、 音ともに美しく、体全身響きに包み込まれ感激。何でも手に入る日本、立派なホールやオルガンもありますが, 歴史があり、響きの良い会堂に鳴るオルガンの音は現地に足を運ばないと聴けない、経験できないものであり、 来て良かったと痛感。

そしてバッハが晩年の28年間オルガニストと音楽監督を務めた聖トマス教会のあるライプチヒへ。 同じ日の午後3時からトマス教会聖歌隊、ゲヴァントハウス・オーケストラによるバッハのカンタータの演奏があるとことがわかる。 どうしても聴きたい。ナウムブルクからライプチヒまで56キロの移動、現地に問い合わせてみると、 「音楽礼拝なので予約やチケットの事前購入は不可能で、当日30分前には並んでください」、、。 移動し、30分前に着いて並ばなければならない、、、今回の旅程で一番心配したところでした。 その日のランチは”お弁当“に。黒パンにハム、チースの大型サンドウィッチが2つ、ヨーグルト、 洋梨のデザートにお菓子が数点、飲み物はアップルサイダー。ドイツ式のお弁当ランチを経験。 皆様にもご協力いただき、また本当はいけないバス内での飲食も許していただき、道路事情も順調で、 30分前に聖トマス教会前に到着。入口前にバスを着けていただく。すでに並んでいる人が、、私達も列の後ろに並ぶ。 バッハ時代と同じように、2階バルコニーでの演奏でしたが、通常の入口とは別扉から入った私たちは(この情報は ガイドさんに教えていただいた)、幸いにもバルコニーの良いお席に。席に着き、ほっと安堵した私、、。 教会は座りきれないほどの人でいっぱいにあり、カンタータの夕べ。(右下の写真がその模様です)

聖トマス教会の聖歌隊を、翌日の日曜礼拝でも聴くことが出来ましたが、小さな子供達の制服姿の可愛いこと、 そして会堂に響く美しいハーモニーに感動。
ライプチヒでは、バッハがオルガニストをし、またバッハが眠る聖トマス教会で、音楽礼拝と日曜礼拝を 守るという格別な週末を過ごしました。

午後はバッハ博物館へ。現在バッハ・アルヒーフで大切なお仕事に従事されていらっしゃる高野昭夫さんと30年ぶりに再会し、 わかりやすく楽しく興味深いお話と解説をしていただきながら博物館を見学、また普段は入場出来ないバッハの館にもご案内いただき、 感謝でした。ライプチヒのバッハ博物館もモダンに建て直され、ハイテクな機材を用い、素晴らしい最新のバッハ研究の場を見ることが 出来ました。またゆっくり訪問したい所。

メンデルスゾーン・ハウスも私が以前訪れた時と変わっていました。メンデルスゾーンは素敵な水彩画を描いていたのですね。 メンデルスゾーンが書いた絵画の展示もあり興味深かったです。ライプチヒでは2泊し、そのほかゲヴァントハウス・ オーケストラの本拠地を見学したり、由緒あるレストランAuerbachs Kellerで食事、 ドイツ最古のカフェでお茶をし、買い物も楽しみ、ライプチヒで3日過ごし、ケムニッツへ。

ケムニッツのホテルは街の中心から少し離れた高台、紅葉した木々に囲まれた自然の中にあり、 高原にいる気分に。ここでは2つの教会で、それぞれ時代の違ったオルガンで私のミニ・コンサートをお聴きいただきました。 ひとつはペトリ教会のラーデガスト・オルガン、1888年に完成したロマン派の楽器です(下の左の写真はそのオルガンの前で)。もうひとつは1136年に基礎、 1499年に後期ゴシック建築で建造されたという歴史のある教会に2010年に完成したVleugelsの新しいオルガン。 ケムニッツでは2つの教会のオルガニストであるペトリ氏ご夫妻(下の右の写真)にお世話になりました。

そして10月16日からドレスデンで3泊。宮廷教会でジルバーマン・オルガン(1755年)を聴き、聖母教会 (以前はジルマーン・オルガンがありましたが、第2次世界大戦で破壊され、現在はケルンの楽器)でオルガン音楽礼拝を守り、 ゼンパーオペラでオペラ「セヴィリアの理髪師」を鑑賞、旅もクライマックスに。音楽だけでなく、 フェルメールやラファエロの名画も鑑賞し、ドレスデンでも芸術の秋を堪能しました。

今回のメンバーはワイン、ビール好きな方がほとんどで、地ビール、ピルス(生ビール)、黒ビール、ヴァイチェン・ ビールと種類豊富なドイツビールから、、またワインもワインリストから選びフルボトルで注文、、 毎晩(いや昼も私以外は皆さま飲んでいらっしゃいました)、郷土料理と共にドイツの味も楽しみました。

今回の旅のために情報集めや準備をしましたが、私の予想、想像をはるかに超えるような旅になりました。それは 参加者の皆さまのお陰であり、ご協力いただいたところも多々あったかと思いますが、お陰さまで楽しく充実した旅になりました、 感謝です。
また現地各所でお世話になった方々、博識でありドイツの音楽大学で博士論文執筆中、オルガンも勉強されたという 現地ガイドさんには7日間、 出発から帰国まで常に事故やトラブルないよう気を配ってくださった添乗員さん、ありがとうございました。
旅は終わりましたが、参加された皆様の胸の中に良き思い出としていつまでも留めておいていただけたら幸いです。 新婚旅行で参加された素敵なお二人、どうぞお幸せに!!

旅の間中プール付きのホテルで水着も持参したのに泳ぐ時間はなく、帰るやいなや10日ぶりにプールへ。 良く食べて良く飲んだ毎日で、体重も間違いなく増えているでしょう、また元の生活、元の体型に戻さないと!
今朝は礼拝奏楽、2つの目覚まし時計に起こされました、体内時間は深夜ですから。来週は大阪で演奏、 そしてプーランクのコンチェルト、クリスマスの譜読みもしないと〜、たたたたたた大変〜

最終日、ドレスデンは快晴、美しい青空で沢山の写真を撮りました。そのほかオルガンの写真、 ツアーの思い出の写真を掲載しました。
写真 <Foto>のページも合わせてご覧ください。







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