この対談記事は白石市役所発行の 「広報しろいし」 No.486 (2000年1月)から、
白石市役所の許可を得て転載させていただきました。
レイアウトや写真は、広報誌に印刷されたものと多少異なります。




略歴
東京都生まれ、東京芸術大学大学院修了、ドイツフライブルク音楽大学ソロ科卒業。 国内はもとよりドイツ、フランスなど海外でも演奏。またフランス国立リヨン管弦楽団など国内外のオーケストラとの共演も多い。 これまでに10枚のCDを発売。 現在、墨田トリフォニーホール専属オルガニスト、神戸女学院大学オルガン科講師。


オルガニスト

Keiko Inoue
井 上 圭 子 さん

ホワイトキューブ(白石市文化体育活動センター)コンサートホールでは、オープン以来、一流の歌い手や演奏家を招いたさまざまなコンサートなどが開かれています。特にパイプオルガンの演奏は、残響時間が3.9秒と国内最長級を誇るキューブコンサートホールの特性とマッチして、数多くの聴衆に感動を与えています。 今回の新春対談は、キューブの記念コンサートなどでオルガンを演奏をされ、また、昨年8月からはキューブパイプオルガン教室の講師をされている井上圭子さんに、キューブのホールやパイプオルガンの魅力等についてお話いただきました。






川井…井上さん、本日は大変ご苦労さまでございます。

井上…よろしくお願いします。

川井…井上さんには、キューブオープン以来、記念のコンサート、また、最近ではパイプオルガン教室の講師として白石市においでいただいておりますが、白石についてどのような印象をお持ちですか。

井上…白石は素敵なまちですね。自然がある、お水がおいしい、蔵王の山が見えて季節感もみんなあるし、温泉もあって、うーめんもあっていいまちだなあと。私もここに来ること、毎回楽しみです。いつもキューブだけなんですけど、お城もぜひ見なくてはいけないと思っています。

川井…いつもお忙しくてとんぼ返りで、白石のまちというのは本来新幹線の東側じゃなくて西側なんですから、もう少し白石を見ていただきたいですね。

井上…でもスパッシュランドに行ったことあります。

川井…そうですか。温泉も東側にはないんです、全部西側なんですね。

井上…白石の一部しかまだ知らなくて、それでも満足しておりましたが、これから少しずつ見ていきたいと思っております。



ホールの響きをヨーロッパの教会に求めたのは、
ユニークであり素晴らしい




川井…実はオルガンというものに、私は思い入れがあるんですよ。というのは、私の恩師がショウスキーという社会文化学者の「世紀末ウィーン」という本を翻訳しました。つまり19世紀末のウィーン、これはものすごい文化が爛熟した時代ですね。それでウィーンが好きになって何遍か行きました。そこでシュテファン大聖堂のオルガンを聴いて大感激したんですよ。一番最初にキューブを造ろうとしたときに、どうしてもあの大聖堂のオルガンの音が聴きたいと言ったんです。そうしましたら、設計家の堀池さんが、それにはやっぱり人が必要だということで三枝成彰さんを紹介していただいた。またその縁で、オルガンの設計は大林徳吾郎さんということになったと思うんですね。

井上…ヨーロッパの教会の響きっていうのは再現できないですね。簡単に言ってしまえば残響が長いんですけど、石造りの天井の高い建物の中での響きというのは、あちらに行かないと経験できないですよね。

川井…ですから、それに近い音ができても同じような音はできないよ。もしそれやるんだったら、例えばシュテファン大聖堂の130何メートルの尖塔を石造りで造って、それが共鳴箱の役割をしてああいう音が出るんだと言われたわけです。その通りだと思うんですが、しかし、ただ一つ言えることは、キューブのホール自体が最初からオルガンを入れようという意図で造られているということですね。

井上…ホールというと、多目的を考えた場合、響きが長すぎると講演会でのお話の声が通らないとか、あるいはほかの楽器の演奏には向かないと言って、妥協案で中途半端なホールを建てられていますが、響きをヨーロッパの教会に求められたというのは素晴らしいことですね。私も毎年決まってヨーロッパに足を運ぶのもそういう音を聞きたい、体で感じたいという気持ちが強いからです。最初からオルガンを考えて、しかも響きは大聖堂を理想とされたというのは、本当にユニークであり素晴らしいことですよね。


オルガニスト・井上圭子
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