川井市長の新春対談 : オルガニスト・井上圭子さん (3)


出演者は世界的な演奏家



井上…それから、オルガンコンサートも年に2回ありますが、海外からとても素晴らしい演奏家がいらっしゃるんですね。私も東京から聴きに来たいと思うぐらいですが、そういうコンサートへもどんどん足を運んでいただきたいですね。

川井…そうですよね。

井上…実にもったいないです。オルガン教室、そしてやっぱり演奏会を続けられること、聴いていただく聴衆を増やすこと、それも頑張っていかなくちゃいけないなあと思っています。市民のために開放された楽器なのですからね。

川井…そうですね。どうもなんか一般的な論調として、ただ飾りにオルガンがあるだけじゃないかと言われるようなホールが多いですよね。

井上…ですから、それは両方ですね、教室とコンサートと。

川井…両方やんなきゃダメですね。

井上…これがお教室だけになっちゃうと、限られた人だけの楽器になってしまいますし。


川井…その前に、オルガンならオルガンの教育が必要かなって思うんですよ。例えば、最初に三枝成彰音楽大学というのやりまして、クラシックなどいろいろな音楽の素晴らしさとか、あるいはどういう構成でどういう具合にできてきたかということを、市民に教えていただきました。現在は、必ずコンサートなどには三枝さんがおいでになってお話をされます。それが実は解説になっているわけですよね。私の本音を言いますと、私なんかは分からないもんですから、一応演奏が終わる、1曲でも2曲でもよけい聴きたいから一生懸命拍手します。でも、実際はシンとなったところでまた1曲弾いてもらっても、その曲が何か分かんなくて聴いているんですよ、そういう人も結構いると思うんですよ。

井上…プロフェッショナル以外の方では多いですよ。

川井…ですから、それを例えば三枝さんのように、この次やるのは誰それの何という曲ですよ、というふうに言ってもらっただけでも違いますよね。

井上…三枝さんの非常に親しみやすい、素晴らしい企画ですよね。

ですから、どんどん市民の方、キューブにいらして聴きに来てほしいですね。キューブのコンサートに出演する方は、世界的な名演奏家ばかりです。これは本当に宝物ですよ。建物だけではなく中身も含めて。

川井…先日、首都機能移転の特別委員会というのがあって、そこで私も意見発表しました。地震に強いとか、緑の中にあるとか、そういう特徴はみんな誰でも言うんですよ。その中で私は、白石は水も豊富だけども、それだけじゃなく水がうまい。その証拠には市原多朗さんが、白石のキューブで佐藤しのぶさんとのジョイントコンサートをしたときに、「白石の水はエビアンの水よりうまい」と言ったぐらいだという話をしたんですよ。それがなんと何カ月か経って国土庁に行って、ある審議官のところに名刺を出しましたら、「あっ、白石の市長ですね、白石の水はエビアンの水よりおいしいと宣伝なさった方ですね。非常に印象に残ってますよ。」と言われましたが、これもよく考えてみればこのホールに市原さんが来なければ、その話できるはずもございません。そのような具合にいろんな波及効果とか、そういうものがあるような気がするんです。



皇后陛下はオルガン大好き


川井…話は変わりますが、皇后陛下ってオルガン大変お好きなんだそうですね。

井上…キューブへいらっしゃったんですよね。

川井…全国植樹祭のときにここへお立ち寄りになりました。実は宮内庁からは脅かされたんですよ。ここにパイプオルガンがあるという話をしたら、恐らく皇后陛下はご覧になりたいって言うだろう。もしご覧になり、その時間が10分かかれば、

白石の物産を説明する時間は10分カットするよと言われたんです。当日、このオルガンは自動演奏できますから鳴らしたんです。そうしましたら、皇后陛下が天皇陛下のところにちょっと寄られまして、なんかささやかれ、それから私に「オルガンですね、どちらから入っていくのかしら。」とおっしゃったんです。

井上…ああそうですか。

川井…それでご案内しました。 入り口はもう通過していましたので、両陛下とも引き返えされてホールに入られました。しばらくご覧になってましたよ。ところが、そういう予定外の行動をとるということが異例、まして前に進んだのを後戻りされることはまずないんだそうですよ。ですから、よほど皇后陛下はオルガンがお好きだっていうことが分かりましたよ。

井上…素敵なお話ですね。

川井…ところが、両陛下は大変な義務感がおありなんですね。物産の説明は10分ぐらいカットされるだろうと思ってましたらね、お休みの時間が約15分あったと思うんですが5分ぐらいで出てこられた。オルガンを10分ご覧になった分を、ご自分の休み時間を縮めて次のスケジュールをこなされたのです。

井上…お気の毒だけどいいお話ですね。

川井…井上さんはじめオルガンの奏者とか、あるいはオルガンの好きな方にとっては、素晴らしい話だと思うんですけどもね。



文化は人の心に迫るもの、人の心を動かすもの


川井…井上さんは21世紀へ向けてどんな夢をお持ちですか。

井上…そうですね、日本も随分オルガン増えましたけれども、いろんなオルガンどんどん弾いていきたいと、日本だけではなくて世界で。夏もパリで演奏会をしたのですが、やっぱり演奏することが自分の収穫になるんですよね。ですから、海外での演奏とかたくさんしていきたいですね。それから白石もそうですけれども、より身近なお教室なんかでさらにオルガンの音に触れていただきたい、そんな企画とかいろいろできたらなんて思ってますけど。市長さんはいかがですか。

川井…私はこう考えるんですよ。よくハコモノって言うじゃないですか。中身を伴わないで単に建物だけを造っちゃったらこれはハコですね。しかし、そん中にいいソフトが詰まっていれば、ハコじゃないと思っています。私は結局21世紀の勝負は環境と文化だと思うんです。高齢化社会ですから福祉は当然でしょう。先日、長野県の小諸市に行って来ましたが、−参りました。あそこには文化勲章受章者小山敬三さんの出身地で、小諸城の中に小山先生の作品を集めた美術館があるんですよ。そのほかに芸術院会員の白鳥映雪画伯の作品を中心とした小諸高原美術館がある。わずか人口4万5千人のまちに素晴らしい美術館が2つもあるんです。

井上…白石には能楽堂があるじゃないですか。

川井…ですからね、こちらは美術館はない代わりにキューブとか能楽堂とか、そういうものを基盤にして文化を発展させて行かなきゃならんと思いますね。どんなに情報化が進んで、音そのものがきっちりと再現されても、それだけじゃないプラスアルファーがある、これが文化だと思うんですね。

井上…なんか人の心に迫るもの、人の心を動かすもの、なんかそういうものが得られる環境っていうのは素晴らしいですよね。

川井…こういうものこそが文化だろうと思いましてね。ですから、時代が変わっていきますと、インターネットとかそういう情報を活用して、仕事そのものは東京にいなくたって、地方からの発信もできるだろうと思うんですね。それでもみんな東京って言うのは、私は決して所得の差だけじゃなくて、やはり文化環境の差が大きいんじゃないかと思ってますがねえ。

井上…だけど、そういう地盤は白石にはありますね。



世界的演奏家のキューブについての感想


川井…先日キューブで、世界最高のオーケストラ、ベルリンフィルの首席奏者たちによるコンサートがあったんですが、彼らはこんな言葉を色紙に残していきました。第1ヴァイオリンのダニエル・シュタープラヴァは「素晴らしい響きに魅力あふれる音、特に弦楽器にとっては」。第2ヴァイオリンのクリスティアン・シュターデルマンは「この響きならどんな要求にもこたえられるだろう、成功したホールだと思う、おめでとう」。ヴィオラのナイトハルト・レーザは「響きが響きを呼び完璧なホール、おめでとう」。チェロのヤン・ディーゼルホルストは「あなたの素敵なホールにおめでとう!モダンで、音にあふれ、ホール自体も鳴っている」。ピアノ奏者のE.シュタープラヴァは「驚くほど素晴らしいホールで、私もピアノと共に花開くことができました」−このように世界的な演奏家からも高い評価をいただいておりますが、キューブにはほかにないソフトが詰まっている、これはこの白石の情報発信の大きな武器だと思ってます。

井上…やっぱり本物を聴いていただきたい、見ていただきたいですね。

川井…ぜひ、井上さんには本物の文化、本物のオルガンの音楽というものを、これから先も白石市民にいろいろな機会をとらえて聴かせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。



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